除去方考察
- 森田とっち
- 2023年3月29日
- 読了時間: 4分
更新日:2023年3月30日
栝桜(カロ)
【基原】ウリ科目シナカラスウリTrichosanthes kirilowii Maximowicz、キカラスウリTrichosanthes kirilowii Maximowicz var. japonicum Kitamura、またはオオカラスウリTrichosanthes bracteata Voigt(Cucurbitaceaeウリ科)の皮層を除いた根」
根が栝桜根(カロコン)
下の写真のようにサツマイモのような形をしています。成分は主にでんぷん、trichosanic acidなどの脂肪酸、アミノ酸、トリテルペンなどで、漢方処方や民間薬として解熱、止瀉(下痢止め)、鎮咳の目的で使用されます。
根を粉末としたものが「天花粉(ベビーパウダー)」

実全体(果実)は栝楼実(カロジツ)

種子が栝楼仁(カロニン)

果皮だけは栝楼皮(カロヒ)

清熱化痰・消腫散結などの効能はだいたい同じ。
神戸中医薬研究会「中医臨床の為の中薬学」によると栝楼は生薬「鳥頭(ウズ)」に反するとある。
トリカブト属植物の根である鳥頭や附子(ブシ)にも相反作用(配合禁忌)があるとされています。
相反作用とは二種の薬物を配合した時に毒性や副作用が発生すること。
例えば鳥頭と半夏(ハンゲ)、甘草と大戟(タイゲキ)、人参と黎蘆(レイロ)等。
局方や市販でよく見かける処方では八味地黄丸(ハチミジオウガン)牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)真武湯(シンブトウ)などの処方に附子が配合されています。
全蠍(ゼンカツ)トクササソリ科キョクトウサソリを食塩水に入れて殺し乾燥したもの

【効能】
①熄風止痙(ソクフウシケイ)熱性けいれん、破傷風のけいれん
②活絡止痛 リウマチ・神経痛などの関節痛
③攻毒散結 皮膚化膿症 頸部リンパ節腫 痰核(しこり)耳下腺炎
【使用上の注意】辛散有毒であるから、虚証(体力低下・虚弱体質)には慎重投与
丹参(タンジン)
シソ科の植物、タンジンの根を乾燥したものです。 タンジンは中国各地に分布するシソ科アキギリ属の多年草植物。
血管拡張、血圧降下、抗炎症、鎮痛などです。また一味「丹参」四物湯(血液不足を補う基本処方)と同じとする表記もあり、増血作用も期待できる。

丹参を主薬にした処方に「冠元顆粒(カンゲンカリュウ)」があります。

富山大学 横澤隆子先生の冠元顆粒の研究を報じた富山新聞の記事

鶏血藤(ケイケットウ)

マメ科ムラサキナツフジの蔓茎 茎を切断すると鶏の血のように赤い汁が流れる
【効能】補血・活血の両方の作用がある。 血を増やして補い、血の流れを促進する。
JPS(日本薬局製剤研究会)製薬株式会社から発売されている「四川富貴膠(シセンフウキコウ)の中に入っています。

我朮(ガジュツ)
ショウガ科Zingiberaceaeガジュツの根茎をよく蒸して乾燥したもの【破血(はけつ)剤】

【効能】
①行気・破血 腹腔内腫瘤の腹痛に三棱(サンリョウ)等と用いる。
恵命我神散(ケイメイガシンサン)の主薬です。

中医学では血液を流す働きの生薬の強さを表す4つの段階があります。
1「養血(ヨウケツ)」(弱)
2「活血(カッケツ)」(中下)
3「化瘀(カオ)」(中上)
4「破血(ハケツ)」(強)
と4段階あるのですが、冠元顆粒は活血と化瘀の間くらい
破血剤は勢いよく巡るので長期連用で血液の消耗に注意が必要。
除去法の中の丹参と鶏血藤に補血作用があるので、破血剤の弱点にブレーキがかかっているシブい処方になっています。
栝楼(カロ)で痰(水分代謝を改善し、身体の水はけを良くして、身体を乾かす)をとり、残りの生薬で強く血流を促進すと同時に血液の消耗も防いで破血剤の弱点を補っています。
陰虚証(インキョショウ=体液不足)で手足に火照りのある人に用いる時に、潤いがぬけて陰虚症状が強く出る可能性があります。体液には自動車のラジエータの水のように、エンジンがオーバーヒートを起さないよう冷やす働きがあるので、体液不足の人は体の火照り、手足の火照りがあって、布団から手足を出して寝ると気持ちがいいと答える人が多いです。寝汗をかくのも陰虚の特徴です。身体がオーバーヒート気味になると、このような弱い熱症状が出たり、交感神経が亢進気味でイライラしたり、セカセカしたり、口の渇きや、肌の乾燥、腸管の乾燥で便秘気味であったり、のぼせやすいので長風呂が苦手、空咳、午後の微熱(潮熱)などの症状を伴う事が多いです。このようなタイプの人に使用すると血液が勢いよく回るため、のぼせたり、めまいやホット・フラッシュのような症状がでる可能性があります。陰虚の人には身体に潤いを蓄える処方を併用すると良いと思います。
【陰虚証の特徴】

【陰虚の舌】潤い不足で血液が煮詰まっているので、赤みの濃い色をして舌の上の苔が無くなっています。日照りの続いた大地のように、烈紋といって、舌にひび割れがあります。こういった舌象に火照りやのぼせ、乾燥症状などが重なっていれば、陰虚傾向と判断して良いでしょう。

【陰虚の処方】
麦味参顆粒(バクミサンカリュウ)冠元顆粒とよく合わせる処方です。

【陰虚の食材】
長いも、れんこん、百合根、はちみつ、梨、バナナ、マンゴー等
まとめ
①附子(ブシ)製剤の使用を確認したら、一時中断してもらう。
②陰虚に対する手当をしながらやったほうが良い。
以上2点、ご注意ください。
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